Technic Library (Outer) No.02
木製グリップの製作方法
1:はじめに
現在市販されているトイガンのグリップはそのほとんどがプラスチック製です。中には実銃もプラスチックのもの(昔のドイツの拳銃など)もありますが、グリップといえば木製、というほど木製グリップは銃のイメージに定着しています。そこで、市販されている木製のグリップを付けたくなるわけですが、ブランドと材質によっては1万円を軽く超えるものもあります。しかし、これを自分で作ってしまえば材料代だけで作れてしまいます。そこで、ここでは木製のグリップを自分で作る際の手順などを解説します。
2:設計
さて、まずグリップを作る為には各所の寸法が必要です。まず、形、厚さ、固定用のネジの位置および穴の深さは最低でも必要です。これらを数値化するのは結構大変です。そこで、もともとついているグリップを用います。
次に、木材の選定です。ガバメントやベレッタM92FS等、厚さがあまり無い物は東急ハンズなどで売っている木のはがきを用いると種類が豊富なので便利です。また、厚さも5mm程度なので、削る量が少なくて楽です。なお、リボルバーなどの厚みのあるグリップの場合、またフィンガーチャンネルをつける場合はその厚みをカバーできる板やブロックで購入することになります。ここで、パイソンなど左右のグリップが合わさるものの場合、ブロックで購入し、それを用いて製作すると木目がそろって綺麗になります。
木の種類に関しては自分が気に入った色・木目のものが一番です。が、お勧めは紫檀、黒檀、リオグランデ・パリサンダー、ウォルナットです。どのような木なのかは自分の目で見るのが一番ですが、このサイトで見ることが出来ます。
木材図鑑
一応、お勧めの木材の紹介を紫檀:その名の通り紫色に近い木材で、ローズウッドと呼ばれるものもあります。木目は綺麗で、硬い為、グリップには向いているようです。ただ、もろい為、落下時などに割れる可能性があります。どちらかというと黒い銃に向いています。
黒檀:家具などにも良く使われる、木目の美しい黒い木材です。紫檀と同じような特性があるため、硬いです。シルバーの銃にも、黒い銃にも合う木材です。
ウォルナット:銃のグリップ・ストックといえばウォルナットというほど定番の木材です。木目が美しく、耐衝撃性があります。硬さは紫檀・黒檀よりは柔らかいですが、加工難度は高いです。色は白っぽく見えますが、オイルフィニッシュを行うことによって深みのある色になります。黒、金、銀などのどの色の銃にも合います。
リオグランデ・パリサンダー:すごい名前の木材ですが、一般的にはリオグランデ、もしくはパリサンダーと呼ばれるようです。ウォルナットよりも全然柔らかいですが、ヒノキなどよりは硬いです。リンク先の画像では黒檀などとあまり換わらないように見えますが、実際には木目がとてもはっきりしていて、明るい色の木材です。茶色・黒のコントラストが高い為、シルバー、黒の銃に合います。
これらの木材は木目・色が大変美しいのですが、非常に高価です。そこで、一番最初に作るときはヒノキやバルサ材などの安くて柔らかい木を買ったほうが良いでしょう。とくに、バルサ材は実際に装着して使用に耐えるほどの強度は持っていませんが、紙やすりで切断できるほど柔らかいので加工手順の練習を行うのに向いています。また、用意した材料はしっかりとした直方体、もしくは表面と裏面が平行になっていて、平らなものでなければいけません。これは、切断時や穴あけ時に表面、もしくは裏面を基準に垂直に行うからです。
また、必要な工具については以下に記します。
必ず要る物
ノコギリ、糸鋸、カッター、ドリル(刃は空ける穴の径の物)、彫刻刀、木工用金ヤスリ、紙やすり、仕上げようオイル(ニスなども含む)、定規・ノギス、チョーク
有ると便利なもの
バイス(万力)、ボール板もしくはフライス盤、エンドミル、サンダー、バンドソー
ノギスは持っていない人が多いかもしれませんが、安いものであれば500円程度でも購入出来ます。持っていると結構便利なものなので、この機会に買っておきましょう。なお、デプスバー(穴の深さなどを調べる部分)というものを今回は使うので、それがついているノギスが必要です。
3:製作
さて、いよいよ実際の製作に入ります。まず、大まかな手順を示します。
1:グリップの形に切断する
2:固定用の穴を空ける
3:内側の加工を行う
4:表面を削る
5:表面を仕上げる基本的には上記の手順ですが、これは板から作る場合で、ブロックから作る場合、いくつか別の工程が必要となります。それに関しては後ほど書きます。では、順を追って説明します。
1:グリップの形に切断する
グリップを作る場合、1、2番目に大変なのがこの工程です。まず、用意した材料に元のグリップを乗せ、外形を写し取ります。固定用の穴がある場合は、その穴も写します。なお、フィンガーチャンネルをつけるときは、その形を書き加えます。ここで重要なことは線を書いた面は外側になるということです。切った後ではこの判別が難しくなることが有るので忘れないうちに「右側・表」等と書いておくことをお勧めします。
書き終わったら、書いた線に沿って切断する訳ですが、これがかなり大変です。まず、必ず垂直に切るということ、そして内側に入らないようにすることです。こうしないと、出来上がったときにガタガタになってしまいます。そのため、実際に切断するときは線の2,3ミリ外側を切ると良いです。直線部分はノコギリをうまく使えれば簡単に切ることが出来るはずです。曲線部分はノコギリ、もしくは糸鋸を使って切ります。
以上は板からグリップを作る場合の手順ですが、ブロックから作る場合の手順も示します。ブロックから作るようなグリップの場合は大抵のものが左右対称であるようなので、片方のグリップの外形を写してそれに沿って切断し、真中で半分に分ければ良い訳です。しかし、この場合だと切断時に厚みがあるため、垂直に切断することが非常に困難です。そのため、バンドソーやボール盤などの機械がないと辛いかもしれません。ボール盤がある場合、外形の外側に沿って穴を空け、その穴をつなぐことによって大体の形に切ることが出来ます。なお、形に切った後、半分に分けるのは固定用の穴を空けた後です(左右のグリップを1本のネジで固定する機種の場合)
2:固定用の穴を空ける
外形に沿って切断するとグリップの雰囲気が漂ってきます。しかし、穴が無いと固定できません(一部の機種除く…といっても固定用の穴が無いのはリボルバーのワンピース構造のグリップぐらいしか見たことありませんが)
さて、もともとのグリップを見ると解りますが、グリップにあいている穴は2段構造、もしくは3段構造になっていると思います。まず、7、8ミリ程度の凹みがあり、それが3、4ミリ程度になり、また7、8ミリ程度に戻るといった感じです。これは、固定用のネジが飛び出ないように、またフレームにあるカシメのための凹みです。この凹みを空ける為にはエンドミルという刃が必要ですが、これは高価なため(1200円以上)一番小さい径の穴はネジが通る穴なのでドリルで開けて、凹みは彫刻刀で削りましょう。
まず、元のグリップの穴の径を計ります。その径の穴を最初の工程でつけた固定用の穴のしるしの部分に空けます。このとき、この穴は垂直に空けなければなりません。ハンドドリルを用いる場合、材料をバイスでしっかりと固定してゆっくりと空けるとうまくいくと思います。
次に、凹みを掘るわけですが、ますはその深さを知る必要があります。フレーム側(以降、裏側と呼びます)の凹みは元のグリップのへこみの深さ、もしくはフレームの突起の高さを計れば良いのですが、外側の凹みは深さを外側から計るのは困難です。そのため、裏側からこの深さを測定します。まず、外側の穴に切断面が平らな円柱等(ドリルの刃の後ろなど)を刺し込みます。この円柱の径は凹みの径より小さく、穴の径より大きいものならば何でも良いです。円柱を差し込んだら、裏側からこの円柱の面までの深さを測定します。この深さを材料の厚みから引くことにより、表面からの凹みの深さが解ります。なお、マルシンやマルイのリボルバーの場合、元のグリップにはガスタンクの為の空間が空いています。このため、表面の凹みの深さを測定する場合は裏面に厚みの一定な板を置いて、その板から円柱の面までの深さを計り、その値から板の厚みを引き、材料の板から引き算します。
あとは、この深さの凹みを掘るだけです。ここで、表面のほうの凹みは多少浅くでも良いですが、深くしすぎるとグリップを固定できなくなるので注意しましょう。また、うわ面の凹みは浅いとグリップが浮いてしまうのでしっかりと掘ります。なお、両方の凹みの深さを考えるとネジの通る穴の部分の厚さが非常に薄い(1、2ミリ程度)事が解ると思います。この部分がないとネジの頭が引っかからず、グリップを固定することが出来ないので、この部分をしっかりと残すように削ることが大切です。
3:内側の加工を行う
銃によってはグリップの内側に加工を行っていないと付けられないものがあります。たとえばガバの左側の上の部分や、ベレッタのトリガーバー、マルイやマルシンのリボルバーのガスタンクの部分等です。この部分は元のグリップから写し取るのが困難(とくに、リボルバーのガスタンク)なので、勘に頼らなくてはならない部分でもあります。また、電動工具などが用意できない場合は彫刻刀で掘ることになるので非常に大変です。
・オートマチックの場合
この手の銃は内側の加工と言ってもあまり大変なものは少ないため、彫刻刀で削ってもそんなに大変ではないです。大体の形に掘った後、銃に合わせながら削っていけば大丈夫です。気をつけることは、グリップ自体が薄い為、貫通しないように気をつけましょう。
・リボルバー(マルイ、マルシンなどのガスタンクがあるもの)の場合
この手の銃はガスタンクが大きければ大きいほど加工が困難です。表面を元のものと近いものにする場合、元のグリップを参考に掘っていけば出来ますが、表面を自分の手に合わせて削る場合、内側を表面の切削が終わった後にやる必要があります。しかし、表面を大胆に削りすぎるとガスタンクか外に出てしまうことも有るので、そのことを考えて削るか、タンクを考えなくてもいいタナカの銃に変えてしまいましょう(W
実際に削るときは、削り過ぎない程度に大まかに削り、グリップに隠れる部分にチョークをつけて、グリップについたチョークを頼りに削りましょう。
この工程からグリップを銃に取り付けたりしながら行うことが多くなります。稼動部分に木の粉が入ると油を木の粉が吸って傷をつけ、作動が悪くなります。そのため稼動部分に木の粉などが入り込まないようにしなければいけません。分解掃除が出来る人であればそのままやっても大丈夫ですが、出来ない人はビニールで覆ったり銃全体にマスキングテープを張ってしまいましょう。
4:外側の加工を行う
外側の加工、というと、すぐにでも削り始めたくなりますが、その前に操作系のための加工を行わなければなりません。たとえば、ベレッタのスライドストップの部分やSIGのデコッキングレバーなどがあたる部分です。ここをやはり元のグリップを参考にしながら加工します。この加工が終了すると、やっと銃に取り付けることが出来ます。ここで、もしあたる部分や加工し忘れた部分が見つかった場合は、この時点で手を加えておくといいです。
この時点でグリップを銃にくっつけると一応ついているが、非常に持ちにくい、という状態になっていると思います(あたりまえか)。ここから、自分の手になじむように、または銃が美しく見えるように削っていきます。基本的にはナイフや彫刻刀で削っていくことになります。丸い部分などは目の粗い木工用金ヤスリを使用すると楽です。以下に木を削るときの注意事項を描いておきますので、参考にしてください。
・刃物の前に指や手を絶対に置かないようにしましょう。大丈夫だと思っていても突然刃物が進んで、怪我をするので注意しましょう(私はこれで何回も怪我をしています…)
・木目(繊維方向)に沿って削ると、簡単に削ることが出来ます。ただし、この木目には方向が有り、基本的には木の根の部分から上に向って削る、というのが定石です。しかし、ヒノキやウォルナット、紫檀、黒檀などはこの向きが時々入れ替わるので注意しなければなりません。ナイフを入れてみて、木が割れるような感じがしたら向きが逆であるということです。このまま削ると、ナイフの入れた深さ以上に削れるので注意しましょう。
・木目に入り込むような削り方をすると、その木目の部分から割れることがあります。リボルバーなどのグリップの丸みをつけるときにこの点に注意する必要があります。
・刃物は出来るだけ良く研いだものを使いましょう。中途半端に切れる刃物は怪我の元になるほか、仕上がりも悪くなり、また効率も悪くなります。カッターの場合、替え刃を2,3枚は用意するべきでしょう。
以上の注意事項は私の経験に基づいたものです。間違っていることなおありましたら是非ご連絡ください。
先日製作したSAAのグリップのこの時点での写真を以下に記します。
この写真からわかるように、私はカッターとノコギリ、カンナで仕上げています。また、この写真には写っては居ませんが、木工用の金ヤスリも用います。
上の写真の製作途中のグリップのアップです。左上がまだブロック状の右側グリップ、右下が7割方削りだした左側グリップです。
形が出来てきたら、全体を40番程度の紙やすりで擦り、ナイフの削り跡などを消していきます。表面が整ってきたら、次は80番さらに120番、240番、400番程度の紙やすりと進んでいきましょう。次の紙やすりを掛け始める前に、一度表面を良く見て、深い傷が無いか確認します。見つけた場合は紙やすりで消しておきましょう。これを繰り返していくと、グリップの削りだしは終了です。
5:表面仕上げ
ここまで終わってしまえば、あとは表面を処理するだけです。一般的にはニス(ラッカー、ウレタン系)による仕上げですが、私は亜麻仁油などを用いたオイルフィニッシュをお勧めします。オイルフィニッシュに関して詳しく知りたい方はこのサイトを参考にしてください。なお、私が使用しているオイルを以下に記しておきます。
・亜麻仁油
「亜麻」 の種子から採取される油で塗料用として最も代表的な乾性油。乾燥性が強く、塗膜の耐水性、耐候性も優れています。これは ストック用のオイルとして、ガンショップにも売っています。
・コーパルオイル
これはオイルというよりも、樹脂だそうです。非常に速乾性があり、透明で艶のある塗膜となります。
・シッカチフ クルトレ
オイルではなく、乾燥促進剤です。亜麻仁油は乾燥性が強いとはいえ、非常に時間がかかる(そのまま塗った場合、1ヶ月はかかる)ため、こういった乾燥促進剤が必要です。
これらのオイルは油絵の具の溶き剤として売っている為、画材屋に行くことにより手に入ります。画材屋にはこれら以外のオイルもたくさん有るので、興味がある人はいろいろと試してみると良いでしょう。
さて、実際に仕上げを行うときは、まず削ったグリップを一回水で洗います。これは木目などに入り込んだ木の粉を出す為に行います。そのため、流水で表面を擦るようにして洗いましょう。このとき表面が荒れることがありますが、そのまま乾燥(5時間から24時間)させます。
乾燥したら、オイルの準備をします。さっき紹介したサイトによると、仕上げの段階によってオイルの配分を変えたほうが良いと出ていますが、私の場合は2段階で仕上げてしまいます。まず、亜麻仁油に乾燥促進剤を混ぜたもの、それが終わったらコーパルオイル、といった手順です。こだわる人はあちらのサイトの手順のとおりに仕上げたほうが言いと思います(絶対に、あっちのやり方のほうが綺麗な仕上がりになると思います)とりあえず、私がやるときの手順を書いておきますので、参考にしてください。
まず、亜麻仁油に乾燥促進剤をませたオイルを用意して、乾燥させたグリップに指で薄く塗りこみます。指を使う理由は、この時点では表面が荒れているため、布などを使用した場合、引っかかってしまうからです。塗ったオイルが軽く乾燥してきたら(2,3時間程度?乾燥促進剤の配分により変わってきます)240〜400番の紙やすりを使用し、オイルを塗りながら表面を整えていきます。紙やすりにより表面が滑らかになったら布などで表面のオイルをふき取るように擦り、綺麗な布でまた薄くオイルを塗ります。このオイルが乾燥してきたら(24時間程度)もう一度オイルを塗ります。こうするとこにより、オイルが深い部分まで入り込み、表面がしっかりとします。表面のオイルが完全に乾燥したら(24〜48時間程度)表面に薄くコーパルオイルを塗ります。乾燥したら(24時間)もう一度塗って、乾燥させて(24時間)表面を布やティッシュなどで磨いて光沢を出して、完成です。
上記の手順の通りやると、大体1週間ほどかかることがわかります。乾燥を待たずして次の段階に行くことも出来ますが、やはりしっかりと待ったほうが良い物が出来ます。なお、完成させるときは埃のかからない場所で行わないと埃が付着して取れなくなってしまいます。
また、以下に先日作成したSAAのグリップの完成時の写真を記します。
上のほうにある製作途中の写真と比べると良くわかりますが、ウォルナットは仕上げるとこのような色になります。銃の奥に置いてあるのはグリップの仕上げに使ったオイルです。右から乾燥促進剤、コーパルオイル、亜麻仁油です。
4:おわりに
以上のようにグリップの製作方法を書きましたが、実際に行うとなかなか大変なものだということがわかると思います。しかし、お気に入りの銃に自分が一生懸命がんばって作ったグリップをつけて、それがとても良いものであれば更に愛着が湧くはずです。時間がある方は是非自分で製作に挑戦してみてください。なお、以上に記した製作方法は私が経験により学んだ方法ですので、間違った方法・更に楽な方法などありましたら、是非ご連絡ください。
5:更新履歴
03/04/08:写真を追加、それにともない文章も追加